FujiSunSet report
生々しい空間作り
『RE:SOUND』という独自概念をスタイルの中枢に据えてサウンド・システムを構築し、活動している私たち。これまでにも大小屋内外さまざまな空間で音を鳴らしてきましたが、つい先日、河口湖近くに位置するキャンプ場にて開催したイベントでは、冒頭のアイデンティティが如何なく発揮されました。いや、というよりかは幾つもの好転要因、不可抗力さえも相まって“体現”できた会になったと言えます。ここではそのファクターをレポート記事風に残しておこうと思っています。と、その前に……そもそも『RE:SOUND』とは何でしょうか?
Re:
「Relaxation」
「Rest」
「Retreat」
「Recreation」
Re:sound system:
「repaire」
「reform」
「remix」
【Statement】
“すでに市場には流れていないものを見つけ、組み合わせて構成されるRe:sound system。時代に反したAnalog set。DJの感性が「Re」をカタチにする”
この考え方を大切にした、今回の現場はこんな感じでした。
父さんが獲ったイノシシ
『RE:SOUND』の中心メンバーは山梨が実家で、東京で働きながら時間を見つけては家族とともに地元へ帰っています。山の民である彼の父さん。春は山菜を獲り、渓流でヤマメやイワナを釣り、秋から冬にかけてはイノシシを狩りに出る。四季のメカニズムを前提とし、生きる術を身に付けてきたまさに山の男。今夜はそんな父さんと息子のコラボ鍋が完成。
鮮やかな紅色が特徴的なイノシシの生肉。臭みはまったくありません。息子があっさり風の下味を付けた鍋にしし肉を加えると、ジワリ……良質な脂が広がりコクのある一層風味豊かなダシへと変化します。グツグツ煮えるのを待つことが心地よい、そう思えるのは森の中にいるからこそ。
ゲストの中にはしし肉を初めて食べる人もいましたが、“獣臭がすごそう”なんて妄想は本当に妄想で終わり、自然の中に身を置くことで本来の野性感を思い出すのか、味覚もワイルドになるのか、とにかく“感覚”がマインドフルな状態に。
アナログ・サウンドがもたらすコト
お腹が満たされた後は、我々こだわりの音を聴きます。DJする者は各々レコードを持ってきていますが、細かいタイムテーブルなどございません。何と言いましょう……“間”を大切に、アナログ・サウンドを繋いでいきます。さて、散々“こだわりの音”と言っているので、機材とセッティングに関しても説明します。
中央にセットされたスピーカーは、ALTO Professional「Mixpack」。現在はinMusic Japanが輸入代理店になっていますが、息子が購入した際は国内に代理店はなく、イタリアから直輸入して取り寄せた思いの詰まった一品。
ちなみに機材類は全て彼が個人所有しているものです。そろそろ倉庫を借りないと奥方に怒られるかもしれない……そんな業者的物量になってきているそうな。
写真の「Mixpack」は中高域部分が別機となっていますが今回は低域を出力するための役割としてウーファー部分のみ使用。
両脇にどっしり構えるのはJBL「MP225」で、今回は上モノ担当として鳴らします。
続いてはDJブース周りを。ターンテーブルは永遠不変・安心安全のTECHNICS「SL-1200MK3D」。数ある同ブランドのターンテーブルの中でも、「3D」は30代後半の方にはお馴染みの青春タンテではないでしょうか⁇
ミキサーは所有者こだわりのVESTAX「PMC-25」(写真上段)。クロスフェーダーと縦フェーダーを備え、EQノブはロータリーさながらの存在感、EQの立ち上がりと滑らかさが秀逸であると言います。また、完全にロータリー・ミキサーに慣れてしまうとクラブなど現場でのセット環境にギャップが出てしまうため汎用性は大切。
セッティングについては「PMC-25」から2機のチャンネルデバイダーYAMAHA「D1030」にL/Rそれぞれ伝送。周波数帯域別に低域は「Mixpack」がパワード・スピーカーなので直接、JBLはパッシブなのでパワーアンプAMCRON「XLS 402」経由で。こだわりつつ、モビリティを重視したサウンド・システムです。
いくら「しし鍋」を食べて温まったとはいえ、この時期の山、しかも夜は相当冷えますが、響き渡るアナログ・レコードの音、時にはフォーマット特有の“プチプチ”とクリックノイズが聴こえたりもします。しかし、それを許容できる、むしろ落ち着くと感じるのがアナログにこだわりDJをする若干狂っている皿回し屋ではないでしょうか。音の良しあしは人それぞれ、それは言わずもがな……肝心なのは現代のミックス処理を忠実に再現するクリーンなデジタル・サウンドが好みか、一方、多少ノイズでくぐもったり、ターンテーブルに影響してビートがよれたりと完璧ではないある種のヒューマニズムを感じるアナログの出音が好みか。それだけの話であり、僕たちはどちらかと言えば後者に惹かれている。だからこそ、一般的に形容されがちな“アナログの温かさ”“シンプルな行為”を私的解釈し、楽しみ・笑っているだけ、かな?
おやすみなさい。
この上ない環境
翌朝、うっすら光を感じて起床。と同時に早起きDJが既にレコードを鳴らしています。昨日は時折雪も混じる曇天模様でしたが本日は打って変わって晴天に。冬籠りしていた人々が、待ちわびた春を迎え外に飛び出してきたような気分です。
そういうことでしたか。朝日で目覚め、外に出たら眼前に広がるのは一切邪魔のない富士山。この景色を見たらサウンドスケープの概念が理解できるかも。
“ふーじーはにーっぽんいちのーやまー”とリフレインしつつ富士山に向けてサウンドを放ちます。だってひょっとしたら究極のディレイ効果が得られるかもしれないですからね。天気・景色・音楽と三拍子揃っているせいかDJたちは昨晩より長めにブースに立っていました。
終わりに。
やはり山でのイベントはいいですね。それは、自然の中で音楽を聴く解放感、といった単純な括りではなく山で音出しするからこその楽しみ方が幾つもある、コンテンツの宝庫だと再認識しました。
次回はどこに?
Photo by matchan
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